NHK大河ドラマ太平記(6)「楠木登場」

NHK大河ドラマ 太平記 完全版 第壱集NHK大河ドラマ 太平記 完全版 第壱集

1991年1月~12月 NHK総合テレビにて放送

【キャスト】 真田広之、武田鉄矢、陣内孝則、柳葉敏郎、高嶋政伸、根津甚八 沢口靖子、宮沢りえ、後藤久美子、樋口可南子、原田美枝子、 片岡鶴太郎、大地康雄、榎木孝明、勝野 洋、柄本 明、近藤正臣、 緒形 拳、フランキー堺、片岡孝夫(現・片岡仁左衛門)ほか

レヴュー(第6話)

 さて、侍所から解放されて3日目の足利家。
ママンったら愛息子・高氏の着付けにあれこれを世話を焼いてます。
いつまでたっても可愛い息子。
「母上〜。」
とか言いながら世話を焼かれ、されるがままの高氏。
若草色の装束がまた一段と高氏のフレッシュさを醸し出しております。
両手を広げて着替えを手伝ってもらう園児を彷佛とさせます。
ちょっぴり恥かしそうな照れたムードがまたツボですね。

 ご出立。
高氏はパパンに同行して赤橋守時の屋敷に向かいます。
彼の口添えがあったからこそ獄中から解放されたのです。
一応、お礼に行くワケですが…。
どう考えても非があるのは北条側(勝手に罪に作り上げて牢獄したのだから)なので弟・直義は「頭を下げにいくのはおかしい。」と一人立腹中(軽く無視)

 しっかし若様姿似合うな〜。

と嘆息してしまうほど晴たる青空のもと馬に跨がる真田さんの清々しさ。
パパンの前ではまだ幼さの残るあどけない若殿。
「赤橋家に行き、何と申す?」
とパパンに尋ねられ、北条側がまず己のが非を認め詫びることが筋であると少々拗ねモードで口を尖らせて答える息子。
めっちゃ可愛いがな〜。
「だって〜、ボクは悪くないもんっ。」
とアテレコしたら違和感なく似合いそうです(私的見解)。
その無邪気な息子の言い方に目を細め「それでよい。」と満足気なパパン。
どこまでいっても可愛い息子だな、おい。

 *****

 赤橋家。
緊張モードばりばりな赤橋家。
事と次第では北条VS足利の戦にも成りかねない緊急事態の一端なのですから。
足利の人間として筋の通らぬことには屈服する気のない強気な父子。
その表情からうかがえる意志の強さと高氏の成長ぶり。
男前やなぁ〜(@ ̄¬ ̄@)ジュルリ♪

 しかし!
赤橋守時も武士の中の武士、筋の通った男の中の男だった。
自ら両手をつき頭を下げ北条の非を認め謝罪したのです。
これには「やや」面喰らった様子の足利父子、すかさず
パパン「赤橋殿、よく足利家を救って下さった。礼を申し上げます。」と頭を下げました。これに習うように隣に座していた高氏も「礼を申し上げます。」って、
(言葉の出始めた)子どものようにまねっこ★

と、一気に肩の力が抜けて油断したところへ真打ち・登子ちゃん登場。
一瞬にしてドギマギモードに突入だ。
そんな高氏の心情を察してどうかは分かりませんが
高氏「思いもかけぬ忙しさに見参かないませんでした(薄笑)。」
パパン「この貞氏も随分忙しゅうござった(微笑)。」
馬右介「この馬右介も随分忙しゅうございました(爆笑)。」
と見事な三段オチ★\(-_-;)
いったいどこの落語家なんだ?

 *****

 すっかり打ち解けたパパンと守時は息子と妹の婚儀の算段中。
幕府を正し、鎌倉をあるべき姿にするために足利と北条が手を組もうと。
熱っくるしい男だのぅ、赤橋守時。

 *****

 あとは若いお二人に任せて…、と世話好きのオバちゃんでもいるかのような計らいで二人きりにされる高氏と登子ちゃん。
さぁ、青春恋愛ドラマモードに突入だ。
お互いの目を合わせられない初々しい二人。
藤夜叉とは初対面でヤ…ごにょにょ、だったのにさすがは由緒正しい姫君には簡単には手を出せない高氏。
まずは語らいから。
とオーソドックスな手はずを踏む見上げた恋愛術師。
紀貫之の古今六条の恋の唄の解釈など話し出し、相手の懐に忍び込むような柔和な微笑みで登子ちゃんのハートをゲット!
御会いになるのは2回目の二人。
なのにこの進展ぶり。
都にのぼったは間違いではなかったな、高氏よ(誰)。
ちょこっと大人になって、君を迎えに来たよ。
そんな感じの高氏、そしてどこかしら
微笑ましい二人なのです。

 *****

 佐々木道誉の鎌倉屋敷。
判官殿は藤夜叉の懐妊を知り、登子と高氏の縁組みを執権殿より聞かされ、自分の出番が無いことに不服をたれ、屋敷に曲者に入られながらも何やら企んでる様子。
そのスキを見て花夜叉は配下に楠木に日野斬首の旨を伝えることを指示。

 その頃の室井さん…じゃなかったましらの石(柳葉敏郎)。
日野より委ねられた短刀を楠木に渡すため河内の国・水分(みくまり)に到達。
しかし、楠木の家が分からず空腹に耐えかねて畑で大根泥棒。
黒のロングコートより小汚い格好の方が似合ってるなギバちゃん(笑)。
と、そこへ…
デタ-------------!金八さん!!
その眼差しはすでに先生モード。
その存在に圧されて思わず、身の上話を始めちゃう石。
その存在感のデカさは顔にデカさに比例している。
石の話しを一通り聞いたところへキッズ登場、栗の木への挨拶まわりに出かける。その様子にあっけにとられる石。
このオッサンは何者?

 そこへ楠木屋敷より使いの者がきて、石は金八さんが探していた楠木正成と知るという古典的かつワザとらしい展開にすすむのです。

 で、楠木の屋敷では新庄先生…、じゃなかった弟・楠木正季が「戦じゃ、戦じゃ。」と戦闘モードに入り中。
そこを義姉にたしなめられ、叱られる子どもモードになるのでした。
そこへ子どもたちを引き連れ「3年B組金八先生!疎開地分校版」ってな感じで楠木正成が登場し、石を屋敷に上げ日野の短刀を受け取るのでした。

 日野の待遇を知り激怒する弟を尻目に賢者・楠木正成は石に曰く
「とにかく死んではならん。世の中はゆっくり変わる。
 良い世の中を見たければ長う生きらねばダメじゃ。」
と先生の口調でこの太平記を象徴するような言葉で石を諭すのでした。

 *****

 鎌倉。
キタ━━━(゚∀゚).━━━!!!!
真剣流鏑馬!
マジっすよ、本当に流鏑馬やってるんですよ奥さん!
この脚力とそれでもブレない肩のライン!
本当に流鏑馬をこなしてしまう真田広之!
さすがJAC!
すげ---!
すげ----!!
すげ-------っ!!!
すげ〜〜〜〜〜っい!!!!
カッコいいっ( ̄TT ̄)鼻血ぶー!

乗馬しながら弓道だよ?
しかも的に当てるんだよ?
スタントなしの本人だよ?
マジ画面から生まれる緊張感。
キリリと引き締まった凛々しい表情。
口を一文字に硬く結び、澄んだ瞳で的を射ぬく佇まい。
乗馬中の身体の揺れから伝わる不安定さをものともせず、揺るぎない真剣さで一瞬の標的に矢を放つ迫力が伝わってきます。
人がやってこその緊張感。
お見事!!!

 執権殿に拝謁。
相変わらずキモい北条高時(片岡鶴太郎さん。現在時代劇「八丁堀の七人」でも仏田八兵衛を好演中。)にとキィの高い声質の佐々木判官のやりとりを厭そうに聞きながら最低限の返事のみをする高氏。
それでもカッコいいけどね!
良い犬と良い一座を抱えた大名を良い大名と呼ぶことにする、とか言われちゃあ、たった今身体張って流鏑馬してきた高氏はおもしろくないさ(誤)。
とか言いながら、ムスッとした顔もカッコいいけどね!

 さて、拝謁済んで帰ろうとしてたら来ました、敵か味方かサッパリわからん久留米出身が(そりゃ関係なかろうて)。

佐々木「足利殿。」

呼び止められて、振り向きざま「警戒モードMAX」な高氏。
話しがあるって、現代若者風に意訳すると
「赤橋さんちの登子ちゃんと結婚するんだってね〜?
 藤夜叉って白拍子覚えてる?
 鎌倉に来てるんだぜ、君の子を身籠っちゃってさ〜。」
ってなことを軽く言われて、高氏まさしく
晴天の霹靂(-_-;)。
(沙紫夜註:すっげ〜青空なのにいきなりカミナリかよっ、超ビックリ★)
驚きのあまり、大っきなお目々がますますクリクリに。
動揺を隠しきれず、モロ表情に出しちゃう高氏にニヤリと耳打ちする佐々木。
「会わせてあげるから、うちにおいで。」
何て危ないお誘いなのでしょう ̄m ̄ ふふ


 藤夜叉の懐妊を知り呆然とする高氏。
足取りも重く烏帽子の上に被っていた笠をとり、ちょくら自失気味。
そして思い出されるめくるめく甘い蜜夜。
初対面であ〜んなことやこ〜んなことやっちゃった高氏。
ちょっとウットリ物思いに耽ってみても事の重大さに力なく崩れる高氏。

嗚呼、何て切ない潤んだ瞳。

真田さんて本当に目の演技で全てを物語るよね!
そして、巻き込まれたり回りに翻弄される役が多いよね〜。
今回もこの苦悩っぷり。
さすがです。

と、ひとり悩み頭を抱え込んでいるところへ、立ち聞きしていた馬右介が登場。
(気のせいか、大地さんが登場するとコント臭く感じるのはワタクシだけ?)
何でもお見通しの馬右介に洗いざらい白状しちゃう高氏。

「藤夜叉には子がおると言うのだぞ?!」

男としての責任を感じる純な若者。
しかし今はそれ所では無い。
赤橋家との縁組みが進められてるっちゅーに、他の女の影を浮上させてはマズかろうよ。
しかも、これは北条と足利にとって、否、鎌倉にとって重大なこと。
この縁組みで全てが丸く収まるのは否定しようのない事実だからな。

しかし、これで良いのか?
新しい世のために奮闘した日野はこの鎌倉の地で刑に処せられようとしている。
そして何より自分は都を見てしまったのだ。
このまま安穏と長い物に巻かれてしまっていいのか?!
って軽く馬右介に流し目(ワンポイント)。

葛藤のなかにある高氏。

自分の本心を語るうちに気分の高揚が抑えられず
泣きそうな子どもの表情で涙目に★
足利高氏、足利の嫡男である前に一人の男、一人の人間なのです。
自分の中に沸きあげる「正義」に蓋をしてまで生きて行くことに疑問を持って当然なのです。
この儚く脆い人間像、しかしその中にある真の強さこそが高氏の魅力のひとつに他なりません。

動乱の時代に源氏の頭領として生を受けた高氏の宿命。
新しい世に思いを馳せながらも、若さ故の葛藤のなかで自らを磨く高氏。
この人としての本質が後に太平の世を築くことになるのです。

ラストカットは弓を抱きその場に座りこみ、感慨深気に思い悩む魅惑のアップ!


高氏、男として成長してまいりました。
また眼球演技とともに高く評価される「真田語り」。
足利高氏の中にある繊細な部分と豪気な部分の内在を見事に表現されています。
あまりに入り乱れた時代。
なのにその渦中で生まれながらも純粋さを失わない高氏。
透明感溢るる真田広之は絶品です。

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